自分にとっての飯田馬之介監督

故人について語るというのは、とても難しいものがある。
亡くなってからもう1年と二か月も経つ。この1年二か月、自分はずっと飯田馬之介監督の作品を追っていたような記憶がある。

飯田馬之介、本名は飯田勉、昔は飯田つとむ名義で活動していた。
「飯田つとむ」名義で活動していた当時、同じOH!プロダクションに在籍していた川崎博嗣に「『1・2の三四郎』の馬之介」に似ている事から「馬之介」と呼ばれていた。その後、小松原一男にその名前を気に入られ、『風の谷のナウシカ』の時に初めて「飯田馬之介」を名乗るようになった。(Wikipedia

色んな呼び名で呼ばれていた監督だったと思う。宮崎駿さんは「馬之介、馬さん、ウマ」永井豪さんは「馬之介君、飯田つとむ君」川元利浩さんは「飯田さん」片渕素直さんは「勉」

自分は初めて名前を知ったときから馬之介さんと心の中で呼んでいる。


テーマ性のある作品が好きだ、とは昔から自分の思っていることだ。どんな作品にもテーマはある。どんな作品でも頭を駆け巡らして考えれば思いつく。

馬之介さんの名前を知ったのはビッグオー4話を観た時だ。コンテがカッコいいと思ったのだ。巨大なロボが上から主人公たちを襲うのだが、それを下からカメラで捉え人物と巨大ロボを画面にうまくまとめているのだ。
メカ作画監督に桝田浩史さんもいることからエフェクトもしっかりとキマっていた。
もっと昔に言えば08小隊だろうが、でもあの頃はただモビルスーツがカッコいいだけで満足だった。

馬之介さんの作品テーマと言うものは普遍的なテーマがあった。それは「おいら宇宙の探鉱夫」だったり「タイドライン・ブルー」「トワノクオン」などがそうだと思う。
しかし、そのテーマを忍び込ませる作品世界の世界設定が変わっていた。SFなものが多かった。
普遍なテーマを漠然とした世界で掲げる、というのが自分にとっての衝撃だったのだ。
そして、そのテーマ性に惹かれる作品が多かった。

馬之介さんは口も悪かった(笑)とどこかのサイトで読んだ。それも分かるような気がする。馬之介さんはこだわりの強い人だった。コンテにもじっくりと時間をかける人、とは川元さんがインタビューで言っていた。頭で捻って捻ってアイデアをコンテに作っていったんだと思う。
原案と監督、両方クレジットされている作品が多いのは馬之介さんがこだわりのある人だからでは、と思う。

不遇の名監督だと自分は思う。OVAデビルマン」は二巻で製作中止。OVAおいら宇宙の探鉱夫」は全六巻中の二巻という短い段階での打ち切り。
第2巻封入特典のライナーノートにおける監督のコメントからも、発売前から打ち切りが決定していたことは伺える。(wiki
監督自らコミカライズしていた08小隊のマンガも本誌人気投票では常時5位以内に入っているのだが単行本の売り上げが悪いため打ち切り決定、したそうだ。
そして総監督として矢面に立たされた「HELLSIMG」プロデューサーや製作側の意図を考えれない視聴者から不当な評価が下されていたと思う。
自分もいつかは観たいと思っている。

自分は馬之介さんの経歴で「ガンダム」があることに少し違和感を覚える。馬之介さん自体ガンプラが好きだったそうだが、「ガンダム」という作品群に関わらなければもっと馬之介ワールドが見れたと思ってしまうのだ。
08小隊も馬之介さんが関わった話数から話が動き出す、ギアが変わる話数だった。そこで神田監督が亡くなり後を継ぐことになるのだが。
08小隊の後半が面白くないと言われても仕方がないことなのだ。神田さんが亡くなるタイミングが悪すぎた。せめてもう少し08小隊という作品がどこを目指すのか、示してほしかったと思う。しかし神田さんを責めることはできない。
当時の事情を自分は知らないので深くは追求できないが、馬之介さんは迷ったと思う。しかし08小隊の馬之介さんのコンテはしびれる出来になっている。

青の6号」は前田真宏監督作品だが元々は飯田馬之介監督作品になる予定だった、とどこかで見た。調べてみて分かったことは08小隊と期間が被っているのだ。これでは監督として作品に参加できない。
フォローしておくと「青の6号」は自分が見てきた作品の中でも、かなり好みの部類に入る。観返すたび違った面のテーマ性が出てくる作品なのだ。OVAという激しくスト―リーが変化していくなかでもキャラクターを丁寧に描いている。作画の面でも古い3DCGだが水の中での爆発が多いために、あまり浮いていない。前田真宏監督の陰の部分が表れていることにも注目したい。

青の6号」は前田真宏監督のカラーになっているが、馬之介さんだったらどんな作品に仕上げたのだろうと思うことがある。それが「タイドライン・ブルー」でもあるわけだがOVATVシリーズでは、また勝手が違うのだ。

GONZOでの馬之介さんは企画やプロデュース活動を行っていたが、じっくりと期間を置いて作った作品が観たかったなあと思う。

馬之介さんは亡くなってしまったが、馬之介さんの手がけたアニメから自分が受け取ったものというのはたくさんあると思う。いつかは、それを作品に仕上げて馬之介さんから受け取ったものを形にしたいと思う。