自分にとっての行列のできる法律相談所

 映画、ドラマ、アニメにおける「演出」というクレジットはバラエティーにも存在する。
調べたところによると、ディレクターとあまり変わらないポジションらしい。正直なところよくわかっていないので、調べるのも面倒くさいし思ってることをどんどん書いていこうと思う。
行列スタッフとは日テレの紳助さん系列の番組でよく使われる名称だけど、どこら辺が共通してるのかよくわからない。一番わかりやすいのが、総合演出を担当している高橋利之さんが毎番組で配置されていること。あとは桜井慎一さんや松岡至さん、いまじんさん。

高橋さんと紳助さんの共通している番組(特番含む)

 この中で一番好きな番組に『行列のできる法律相談所』がある。司会者である島田紳助さんが一番輝いていたテレビのバラエティーだと思っている。
それを再確認したのが週刊文春の紳助さんに対するインタビュー。

週刊文春』 2012年4月26日号(2012年4月19日発売)に掲載されたインタビュー内において、芸能界復帰(政治家転身)を否定した一方、自身の引退で迷惑を かけた人達(各出演番組のスタッフ等)への償いをしたいという気持ちがあるとし、本番組のスタッフを指して、彼らから「特番やろう」「BS(の番組)やろう」と言われたなら「1回だけやりたい」と述べている。

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これだけ信頼を寄せるスタッフの方々。行列は紳助さん自身が三回目のブームを予期したものだったけど、ここまで続いて、影響力のある番組になるとは思ってなかったんじゃないかなあ。それも紳助さんの魅力を十二分に引き出す演出があったからだと思っている。

 行列の演出はまずテロップの多様さ。カラフルな色のテロップに様々なフォント。会話の途中の大事な文字があった場合には色濃く、四角の括弧で印象的に伝える。例えば 「そのままいったら【離婚】ですよ」。悪い口調や強い口調のときは紫色の文字。黒文字や灰色でないほうが伝わりやすいんだろう。紳助さんは例えを三つ出して質問したりするので、そういう場合は【】が三つになって視聴者にわかりやすく伝える。一言に三種類の色を使ったときはやりすぎじゃないかと思ったけど(笑)。
 さんまさんは物量でどんどん膨らまして笑いを取るタイプだけど、紳助さんはピンポイントで音をうまくつけて笑いを取るタイプだから、このテロップが非常にマッチしてる。
  そしてBGM。悲しいときには悲しい音楽をかける。有名なのは東野幸治さんの心ないシーンに、かの有名なハリーポッターの音楽をかけて東野さんの意味不明さを醸し出す。紳助さんがイイ話をするときにもかかるけど、これはオチを盛り上げるための演出だと思ってる。最後オチをピシャッと締めるための盛り上げ。紳助さんは喋りの中で音を取るのがめちゃくちゃうまい。僕は紳助さんの一番すごいところだと思ってる。だから感動系のBGMをつける必要はない。でも、なんだかんだ言って最後オチを決めてる紳助さんへのアシストだと思ってる。
 もちろんイイ話だけのときもあるし、オチがないときもある。だから、紳助さんの番組って映画でいえばエンタメ映画なのかな、と。で、さんまさんの番組はコメディー映画。
  出演者の方々にも触れおきましょう。この番組で今までずっといるのは東野幸治さんと磯野貴理子さん。また、この二人がいい味だしてるんだ。弁護士席には北村弁護士がいますけどね。東野さんと紳助さんの掛け合いにハズレなし。紳助が生み出すボケ、それに東野さんがツッコんだり、乗っかったり、膨らましたり、これが一番笑えるし面白い。また、カメラワークが良くて東野さんがキレたりするとカメラが揺れて感情を表してくれる。貴理さんに関して言えば、場を乱し過ぎ。番組でも言われているようにプロに見えない。でもそれが一種のアクセント、スパイスになってると思う。にしては激痛の起こる味だけど。あの素人芸みたいなのが、プロの中で生きる。なんか予測不能の笑いがそこにはある。紳助さんから振られたり、攻撃されたりしたときの返しが予測できない。なんだそりゃ、みたいな笑い。あのトープラントークも紳助さんがいるからこそ成り立つわけで、話した後はボコボコにされるのがまた貴理さんの味を出してるんだなあ。
 行列10周年スペシャルのとき貴理さんに彼氏がいることが発覚して、貴理さんに紳助さんが何個も質問をして、貴理さんが答えられず口ごもって紳助さんがちょっと声を荒げる場面があるんだけど、それを東野さんがフォローしてるのを見ると、良い関係なんだなあと。
 初期メンバーをどう決めてるのか僕はわからないけど、まあ紳助さんとスタッフで決めてるんだろう。円広志さんを決めたのは、紳助さんよりも年上で自分の意見をしっかりと持ってる。その意見が一般寄りだしまあ、大御所という役割。紳助さんと長いことやってるから紳助さんの笑いの取り方を知っていて、ツッコミをしっかり出来る円さんは適役。紳助さんが攻撃できるっていう部分も大切。石田純一さんは、法律番組ということで女性問題もあるわけで役割はそこの部分。不倫は文化とかトンチンカンことも言ってるけど、そういった部分では紳助さんと意見が重なる部分があるから、そこで仲間として一緒に浮気などのワードを出しながら笑い話にもっていく。石田さんがいなくなってから行列で平然と「浮気」や「不倫」などのワードが使えたのは初期に地盤をしっかりと作ったからだと思っている。
 もちろん、この番組の肝であるVTRは一つ一つ完成度が高い。高いし、遊び心に満ちているものが多い。「恐妻家スペシャル」のときのVTRなんて、ふざけたものが多い。でも、短いが中身は詰まってる。毎回の一番のゲストの紹介VTRは誰に対してもわかりやすく伝わるように心掛けられている。レギュラー陣を紹介するVTRも回を重ねるごとにコンパクトになっていく。例えるなら、東野さんの心ないVTR、紳助さんの暴言VTR。
 効果音も演出に含まれるのだろうか。紳助さんは例えが抜群にうまい。体全体で例えたり、言葉で例えたり、言葉の場合はイラストがテロップの横に挿入される。ここも、わかりやすさが重要視されてるんだろう。大声を出してツッコむところに「ドーン」みたいな音の演出。貴理さんがゼリーを一旦口に入れて、吐きだしたときの「PON!」という効果音。これで面白みはぐっと増すのだ。
そして、一番重要な演出がカット割りの多さだと思ってる。大体は三つのカメラを使ってる。会話をしている二人をそれぞれ二つのカメラ、そして全体を見せる一つカメラ。その間に挟まれる共演者の顔。これをテンポよく割っているのが一番の特徴。このカット割りにはイマジナリーラインも感じちゃうよ。共演者の聞いている姿が映ることで、視聴者もその会話を注意して聞いてしまう。紳助さんの例えで言ったツッコミかなんかがイラストで出るが、その絵が画面全体を占めるのではなく、行列ではテロップの横にあるのはカットを割るから邪魔になるのだと考えてる。
 やっぱり、さんまさんや紳助さんのような関西のひとはスピードがあるので、こういった演出はかなり合っていると思う。
 行列はこのメンバー、スタッフじゃなかったら、ここまで続いてなかったと思う。そのメンバーをうまく選んだ紳助さん選球眼のすごさ。貴理さんとそれまで絡みがほぼなかったのに、イケると思った目利きのよさ。だから、後期紳助さんの行列は気になる人SPとかやっていたけど、基礎がしっかりしていたから崩れなかったんだと思う。 番組の構成はよくある形かもしれないけど、一つ一つの完成度が高い。
  この番組の最大の魅力がトークで、出演者も激しいトークをするし、それは弁護士のみなさんも同じ。その全てをうまくまとめる自信が紳助さんにはあったんだと思う。貴理さんがどんだけ場を乱してもこ最後はうまくまとめられる自信。
 そして、この行列の独特の雰囲気が紳助さんに合っていたんだと思う。あの独特のキツさが。そのキツさをうまく笑いにまとめるのが紳助さんのすごいと思う力であり、出演者全てを最大限以上に生かす行列の演出だと思う。

 行列のできる法律相談所とは、トーク番組における演出の完成形で、最高級の島田紳助エンタメトークバラエティ番組なのだ。
 長いよ!