「けいおん」が好きではない理由

自分はテーマ性のある作品が好きだ。
数多あるアニメ作品の多くがテーマ性を持っていると自分は思っている。
どんなアニメでもテーマを持っている。なければこじつけでもいいから、勝手に自分たちで付ければいい。

けいおん」は深夜アニメで一つのブームを起こした作品だと思う。普段アニメを観ることのない友人が深夜アニメを観るきっかけとなった作品だった。そして、それは友人だけではなかったと思う。

では「けいおん」のテーマとはなんだろうか、と考える。「けいおん」は中身のないアニメだと言われることもあるかと思う。中身のあまりないことが「リアリティ」として視聴者の目を惹いたのだと思う。が、自分は中身がないとは思わない。テーマ性と中身が合っていれば、「中身」を論議する必要はない。テーマを話し合えばいい。
前もって言うならば、自分は「けいおん1期」は観ていたが「けいおん2期」は観ていない。作品を観ても自分の中でプラスになるものを得られるとは思わなかったからだ。
しかし、「けいおん」が好きな友人をからかうために2期の1話と最終話は観ておいた。

では再び、「けいおん」のテーマとはなんだろうか、と考える。
アニメファンそれぞれの違った「けいおん」のテーマがあると思う。
自分の中での「けいおん」のテーマは「永遠の青春」だ、その考えを持ったのが2期の最終話だ。

けいおん」は女子高に入学した女子高生が、廃部していた軽音楽部に入りそこでできた友人たちと共に青春の日々を過ごす、といったストーリーになっている。
高校に入ってすぐ友人が出来るとは、なんて幸運なヤツらだ、と今放送してればキャンキャン吠えるだろうと想像がつく。
けいおん」最終話は確か卒業にスポットを当てていた。それは「青春もの」であれば至極当たり前である。出会いがあれば別れがあるのは当然だ。
別れの場面では、軽音楽部のメンバー5人のうち卒業するのが4人、たった1人の後輩は一緒に卒業できなかった。
その4人の進路先は大学で、普通と言えば普通だが、現実にいる等身大の高校生と変わらない描き方をされていた「けいおん」においては一番リアリティのある進路先だった。
ここで自分の中にある問題点が生まれた。
それは「4人が同じ大学に進学する」という一点だ。
この一点が1期、2期と築いてきたリアリティを崩壊してしまうのだ。
自分の高校時代を思い出すと、まあつまらないものだった。中学時代が楽しすぎたのだろう、空気は変わり自分とは合わない人間ばかりいたし、自分が人見知りだということを理解し打ちのめされた高校一年生だった。入学して4,5ヶ月は友人も出来なかったが、なんだかんだと徐々にできていった。そして卒業式は泣きも悲しくもなかったが、3年間でできた友人たちと別れるのは感慨深いものがあった。これが自分の青春だった。友人が少なかったことを後悔もしなかったし、それがいつか笑いになれば自分の中では高校生活も悪いものではないと思ったからだった。

話を戻そう。自分の中にある「けいおん」のテーマ、「永遠の青春」。しかし「永遠の青春」というものは存在しない、青春とは一瞬のものだ。その一瞬を人によっては歩き、走り、しかし駆け抜けていくことだと思っている。辛くても楽しくても、その時間その空気感だからこそ楽しいのだし、辛いのだと思う。そして別れたくない、しかし別れなければならない、「青春」とはそういうものだと思っている。
別れの描写を入れたにもかかわらず、同じ大学に進学した彼女ら4人からは3年間描いてきたリアリティのある「青春」全てが崩壊してしまうのだ。
自分は「けいおん」の最終話が嫌いであり、たまたま観た最終話で愕然と気味の悪さを感じた記憶がある。
それだけ「青春もの」というジャンルは難しいと自分は思うのだ。