自分にとっての上岡龍太郎さん

上岡龍太郎さんの動画を観たのは去年のことだったと思う。
自分は上岡さんの名前は昔から知っていた。島田紳助さんをフリートークという点では一番尊敬している人物であったからだ。上岡さんは紳助さんの心の師であったように思う。紳助さんを尊敬しているのだからWikipediaを眺めて知識を深めている時期があった。
上岡さんは紳助さんの心の師でそれは数々の発言や人物から推察するに。上岡さんのWikipediaを見ながらそう思った。
上岡さんは「素人相手にしゃべったらさんま、芸能人相手なら紳助」と評している。これを昔読んだ自分はすごく納得した記憶がある。紳助さんだからこそオールスター感謝祭の司会が務まったのだろう。
紳助さんが引退してから、懐かしく思い紳助さんの動画を漁っていたとき、ふと上岡さんの名前を思い出し上岡さんの動画にたどり着いた。パペポTVという上岡さんと笑福亭鶴瓶さんが上岡さんの引退するまで14年間やっていた番組でその最終回だった。ゲストに伸助さんが出てくるのだけれど、それがまたキレキレで面白いし痛快なのだ。そんな紳助さんを上岡さんは見ていた。あまり喋らなかったのだ、今思えば見守っていたのかもしれない。だから上岡さん単独で出演した番組を見たときの自分への衝撃と言ったら凄いものだった。それは「話芸」そのものにふさわしかった。

上岡さんは58という年齢で芸能界から去った。
その年齢が早かったのか遅かったのかは未だに分からない。
今のテレビを見れば早すぎたのか、それとも上岡さんの心中を考えれば早くて良かったのか、何も自分には分からない。当時のファンでもないし、上岡さんが引退したのは2000年のことだ。
でも何かを上岡さんの言葉から受け取ることは今の自分でも可能だと思う。

まずは上岡さんがどういう芸人だったのか、この動画を見れば分かる。パペポTVの特選動画みたいなものだ。

どういう笑いの作りをする人か分かるはず。上岡さんはなかなかいない笑いのタイプだと思う。ある意味で屁理屈じみた笑いを取る。しかし、その屁理屈がとんでもない位にくだらない。しかし、そのくだらなさがたまらなく良いのである。

そして、そのくだらない面から一変とても真摯な姿を見せることがある。
次の動画は上岡さんが「TV」というものに対して、芸人だった上岡さんがどのように捉えていたかが分かる。
(1990年代NHKBSと思われる)

10分という長尺かもしれないが、聞き心地のよい喋りにはついつい引き込まれてしまう。
そして10分00秒に見事収めている。
上岡さんの喋りには聞く気が無くてもついつい聞いてしまう力がある。これを「話芸」と言わずして何と言うのか。

そして上岡さんは「TV」というものがどういうものか、また別の観点から語る。
といっても次の動画は討論番組の模様である。「幽霊を見てしまった50人」と上岡さんが討論するという形式の番組だろう。上岡さんは実体験から霊感や霊商売のような類のものを嫌っている。
この討論番組でも「TV」の本質を示している。しかし、ただ真面目に喋ってるだけではなく上岡さんなりのユーモア、ブラックさを交えながら喋っている。それが面白い。
ちなみに「50人」がそれぞれ持っているフリップには、それぞれの実体験が書かれている。

5分からは見なくても良いかな。他にも面白い動画はたくさんある。
ダウンタウンと共演している「ツキイチダウンタウン・最終回」http://www.youtube.com/watch?v=d56Fz-wI23s
紳助さんと組んで画期的な企画を打ち出した「EX(エックス)テレビ」http://www.youtube.com/watch?v=-Y7zKQm3dLY

上岡さんと紳助さんは似ている部分がある。人を攻撃するときは得意げに攻撃できるが、逆に反撃されると縮こまってしまう。そして分析癖も似ている。
また両方ともに広い知識を含む理路整然とした喋りが特徴である。
しかし上岡さんは浅い知識を持ちながら喋っている自分に「何言ってるんだ上岡は」とTVを観ている視聴者に嘲笑してもらいたい。それをスタンスにして欲しい、とどこかで話していた。
そんなの無敵じゃないか!(笑)と自分は思った。
知識を持ちながら喋っている人を見て、視聴者は「なるほどな」と思う人もいるし、「なにを馬鹿な」と思う人もいる。もちろん正解は無いが、どちらかというと「なろほどな」と思う人が多くいるはずだ。ましてや上岡さんほどの知識ならば。しかし煙に巻かれたくない少数もいることは確か「なにを馬鹿な」という人もいるかもしれない。しかし、そんな人には「それが正解ですよ」と言ってしまう上岡さんはずるいと思う(笑)
紳助さんはいつかの番組で知識を持ってる芸人の司会者が生き残る、というようなことを言っていた。だから紳助さんも朝の情報番組に出て自分自身が知識を付け、自分に知識があることを世間にイメージづけたかったんだと思う。
それは間違っていない。紳助さんは50過ぎた芸人が馬鹿ばっかやっていても空しいだけ、とも言っていた。それも非常に納得できる点だ。

上岡さんと紳助さんの違いがあるとするならば「真面目な喋り」だと思う。紳助さんは真面目な喋りのなかになにも入れない。伝えたいことを言葉のまま伝える。これはダウンタウンに対しての姿勢で分かってくる。紳助さんはダウンタウンへの思いが色々あるのだろう、一切笑いなしで伝えている。その姿勢も自分には尊敬できるところが分かる。
一方、上岡さんは自分のユーモアを交えながら言葉を伝える。まだまだ見ていない動画は多々ある。
しかし、この点に関して上岡さんの動画を見れた自分は幸福だった。価値観が広がった気がする。後は気がするだけではなく、自分のできることをするだけだ。